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ネオ人生幸路 早川いくを
便所DREAMERS

第12回 夢を語り合おう!

 といっても、将来アーティストになるぜとか、お店を持つのとかいった夢想ではありません。睡眠時に脳内に展開される、知覚現象としての夢のことです。
 悪夢に淫夢に明晰夢、夢にも色々ございます。
 しかし、その中でもことさらに排泄に関する夢をとりあげ、様々に考察しようというのが、著作家・早川いくをと、挿絵画家・寺西晃が立ち上げたユニット「便所DREAMERS」です。
 では便所DREAMERSの素敵な夢物語に、皆さんをご招待しましょう…。

 早「寺西さん、以前ご自身のHPに放尿の夢のことを書かれてましたね。それを見て、アッと思いましてね。私もちょくちょく見るんですね。排泄夢を。で、一度その手の夢について、一度じっくり話し合わねばいけないなと思ってまして」

 寺「便所夢は大抵、変わったシチュエーションですよね」

 早「では早速寺西さんの便所DREAMをご紹介しましょう。『押入の穴』という、山岸涼子先生の恐怖マンガみたいなタイトルです」

押入の穴(寺西)

 親しい友人の家。「便所どこ?」と尋ねると、二階の和室に案内される。
「俺は小便がしたいんやけど」
 友人は押し入れの戸を引いて開けて見せた。そこは一見普通の押し入れであるが、底板に小さい穴がある。
 おそらく、ここがこの家の便所なのだった。
 抵抗があったが、押し迫る強烈な尿意に勝てず、早々と放尿を始めた。穴の中は真っ暗な闇だ。パイプが通っているのかも分からない。狙いがそれると辺りがびしゃびしゃになってしまうので、からだがぶれないよう慎重になる。
 誰か来やしないかという不安があり、早く出しきろうと下腹に力を入れて急いだが、なかなか終わらないのだ。

常識では考えられないが、おそらくここがこの家の便所なのだった。

 寺「強烈に印象に残っている夢なんです。なんせ和室の押し入れですよ。しかも二階。さっきまで友人の家族と楽しく過ごしていたその真上ですよ。僕が放尿している穴の下に、友人の家族がいるかもしれない……。コワイですよね」

 早「楽しく歓談しているご家族の上に、尿のシャワーを浴びせているかもしれないんですよね」

 寺「僕はそんな事したくない。考えられない。でも友人が便所はここだという。おかしいと思うんだけど、尿意もあるもんだから、もうやるしかないと……」

 早「結局、尿意に負けると」

 寺「この違和感あるシチュエーションが何かを暗示している気がしてて、ふと思い出したんです。以前入った居酒屋で、二階の便所に入った時、小便をするとあかんような不思議な感覚になったんです……。この夢の印象と似てるんですけど、分かります?」

 早「居酒屋の便所で不思議感覚と言われてもねえ」

 寺「うーん、どういえばいいのかな……。例えば舞台セットなんかでよくある、一階と二階を断面にしたような構造。
観客からは一階も二階も丸見えですが、一階と二階の人は、互いの行動が分からないという…」

 早「ドリフのセットみたいな?」

 寺「そうそう。想像してみて下さい。一階では頭上で小便をしている男がいるなんてことを知らずに、下では呑気にビールを飲んでいる。すごく変じゃないですか! ほら、観客の立場になってみて!」

 早「ああそれか!(額をペシと叩く)。ぼかあ、ガキの頃からその違和感に悩まされてますよ。
男女が愛を語らっている時でも、葬式の最中でも、壁一枚隔てたらウンコしてるかもしれないんですよね。ビルやマンションってそうですよね。それ、考え出すとその違和感が頭から離れなくなる」

 寺「そうそう、その違和感! 集合住宅では必ずといっていいほどこの違和感は付きまといます。隣だけではなく上も下も何をする人ぞ、だもの」

 早「そう考えると、都市ってすごくばかげた空間ですよね。X透視とかできたらとてもイヤ」

 寺「僕の住んでいる集合住宅は、便所のある場所は上も下も便所。なので、タイミングが悪ければ真上で流されたりしますよ。
あ、今流したな……って。で、天井を見上げる(見上げないけど)。このときX線の目だったら絶対嫌ですねえ」

 早「都会派」とか「トレンディ」とかいっても、すぐ隣でウンコが流れていくのが都市空間ですね。ある時期なんかは、「トレンディ」って言葉を聞くと反射的に「ウンコ」って言葉が脳裏をよぎってましたね」

寺「それも分かる分かる! そうか、早川さんも違和感を度々感じていたんや。それなら話は早い。」

 早「恋する男女がグラス傾けてたりとかしてても、突然大地震が来たら、破裂した下水管から大小便が度ばーっと、降り注がれると思うんですよ。別に突飛な空想とかじゃなくて、実際そういうことは起こりうると思うんですよ」

 寺「うわー、めちゃくちゃ臭そうやけどありうる〜(笑)。やはりみんな気づかないふりをしているんじゃないですかね。いまさら違和感を口に出してもどうしようもないことだと。もしくは無かったことにするのに慣れきってしまって、もはやそう感じることすら麻痺しているとか……」

早「違和感といえば、寺西さんの「温泉町」の夢も、違和感の極北という感じがします」

温泉町(寺西)

 どこか知らない地方の、寂れた温泉町にいる。やけに静かだ。湯けむりで、あたりは灰色一色だった。
 浴衣姿でさまよって冷えたのか、小便をしたくなってきた。しかし便所が分からない。近くを通る人に尋ねても何も教えてくれないどころか、誰もこちらを見向きもしない。

 ようやく、ひとりの老人が無言で脇道を指さした。川沿いの小さな小屋だ。湯けむりで何も見えない中。手探りで中へ入った。湯気で充満していた。水滴が天井からポタポタと落ちてくる。
 床にぼんやりと和式の大便器があるのを見つけて、小便をしようとしたその時、ふいに山から風が吹き、湯気がかき払われた。すると人影が現れた。さっきすれ違った温泉客だ。
 なんとこの便所、一方に壁がなく、丸見えなのだった。
 頭の中が真っ白になり、動けずにいた。川湯につかる温泉客たちはこちらを凝視している。
 背筋に言いしれぬ悪寒が走る。それと同時に、尿意が今にも限界に達しようとしていた……。

「どっきり大成功!」のプラカードを持ったヘルメット男が
登場して、笑い物にしてくれた方がいっそましというものだ。

 早「どこか地方の温泉旅館にいるんでしょうけど、得体のしれぬ場所で、じわじわくる恐怖感がありますね。スティーブン・キングと川端康成が合体したような感じ。
 続いて私の便所夢もご紹介します」

レッドキングの里(早川)

 どこか知らない地方の旅館に泊まる。
 その地方の用の足し方は独特だった。二階から体を乗りだし、屋根に放尿するのだ。
 これは怖い。命がけの排泄だ。しかし、現地の男性はまったく意に介さずこの方式で排泄する。
 しかも宿の女中さんによると、この地方にはよくレッドキングが出没するのだそうだ。毎年何人もの犠牲者が出るらしい。
 放尿中にレッドキングと出くわすことを想像するだけで、恐怖に体がこわばる。恐ろしさのあまり、もうこの地方では小便ができないと思う。

実在するレッドキングがこんなにも恐ろしいものだとは思わなかった。

 寺「この夢も、地方の旅館での話ですね」

 早「あっ。本当だ。急に地方旅館が怖くなってきた。もう絶対行かないぞ。地方旅館」

 寺「夢の中だと、思いきりリアル恐怖やもんね。レッドキングの恐怖も半端じゃなかったでしょう」

 早「現実に出会ったら、チンポ出したまま気絶ですよ」

 早「ところで、他人のいるところで排泄、というのも便所夢に頻繁に出てくるモチーフですね」

 寺「うん、たしかに多いなあ」

「大浴場のような便所」(寺西)

 渡し船で川を渡ると知らない町に出た。飲み屋が並び、賑わっていている。
 隠れ家を見つけた気分で、二〜三軒はしごをすると、小便をしたくてたまらなくなった。
 最後に入った飲み屋は迷路のようで、やっと見つけた便所の入り口には、のれんが架けられている。くぐると脱衣場があった。広くて湯気が立ちこめ、まるで大浴場のようだ。

 床のタイルが濡れている。裸足なので気持ち悪い。壁に向かってずらりと小便器が並んでいて、そこで数人の男が小便をしている。
 並んで小便をしようとするがどうも居心地が悪い。うまく出せない。そうしている間に便意を催したらしい。しかも下り気味のような気がする
 奥に行くと、ずいぶん高いところに個室がある。和式の便器が備え付けられている。
 ベニヤ材のお粗末な扉が、開け閉めするたび、べらんべらんといかにも安っぽい音をたてる。
 どう考えてみてもこんなところではできない。しかしこのまま何もしないで出ると、変に思われるかもしれない。いったん扉を閉め、少し時間の経つのを待って、いかにも用を足し終えたかのようなふりをした。
 僕はシクシクとした下っ腹の違和感を持ってすっきりしないまま便所を出た……。

壁に向かってずらりと小便器が並んでいて、そこで小便をしている。

 早「あーもースッキリせん夢だな。それにしても、何で人前での排泄行為って、こんなに抵抗あるんでしょうね」

 寺「やはり人前では緊張を解けないからではないでしょうか。
はるか昔の時代、ヒトは狩りに出たとき、原野ではいつ何時襲われるかもしれないという理由から、いつでも戦えるようにと、立ったまま用を足していたのだそうですよ」

 早「そのわりには、排泄方法はずさんですね。免疫とか消化とか、ほかは高度に進化したのに、排便時なんて、本当に無防備。マストドンとか出てきたらどうすんだ」

 寺「じゃあ例えば、足のつま先に排泄器官があれば問題ない。口笛なんか吹きながら人知れず排泄ができる。マストドンが出てきても大丈夫ですよ!」

 早「指先からとか出せれば、イザっていう時目つぶしも喰らわせられてかっこいいなァ」

 寺「サイボーグ009にもそういうの出てきましたね」

 早「排泄に原始時代からの恐怖があるから、夢に現れるのかな。そういや子どもの頃、「便所を霊がのぞくんじゃないか」っていう恐怖をうち消すため妙な行為をやってましたね。
厳密に決まった手順で周囲を確認しないと、安心して排泄に移れないんですよ。手順とか間違えると一からやり直し。これ、かなり苦しいです」

 寺「僕もそんなおまじないのようなものがありました。小学生のころだったか、何かの露天のおやじの変な口上を聞いてしまったんですよ。
「小便するときに便器につばを吐いたら罰が当たる。もし誤って吐いたりしたときには、すぐに続けて二回つばを吐かねばならないっ!」
それ聞いてからは、「そんなバカな……」と思ってはいるもののそうせずにいられなくなりました」

 早「そういうのって、『脅迫性障害』っていう立派な病気らしいです」

 寺「便所の「恐怖」には心霊とかの恐怖もありますね〜。つのだじろうの漫画でありましたよね。ぼっとん便所の中にパンパンにむくんだ顔が……ああっ、こわい!」

 早「『亡霊学級』ですね」

 寺「さて、他人の排便の瞬間ですが、見たくないというより、なんだか見てはいけないという気がするんですよね。人間の尊厳に関わる行為のようにも思うんですよね」

 早「尊厳、ですか」

 寺「例えば、父親が便所で排便をしているとします。あ、この場合和式便所がグッドですね。そこへ知らずに小学生の息子が便所の扉を開けてしまう。
 「わっ」と叫ぶ息子。「こ、こらっ……」と振り向き怒鳴る父親。
 息子は慌てて扉を閉めて洗濯物をたたむ母親のいる部屋に飛びこむが、ざわついた胸は治まらない。頭の奥ではこちらに尻を向けて排便する父親の残像が何度もリプレイする。
 今後の親子関係が気まずくなることが容易に想像できますね。見た側も見られた側も傷つくんです」

 早「まちがって開けてしまったというだけで、家庭は崩壊し、人間の尊厳が貶められるんですね。便所ってスリリングですね」

 寺「互いに心に傷を負った親子にこの先どんな人生が待っているのか……。不幸な事件です」

 早「どうして排泄行為ってこう特殊視されるんだろう。ひょっとして尻の形状が滑稽過ぎるせいですかね。二つに割れてるし」

 寺「人間の本能レベルのことですが、尻を見ると欲情するものらしいですね。人間の女のおっぱいは尻と見せかけて男の気をひくためにあんな形状になったと聞いたことがあります。
あーっ!もしかして。だから家族の排泄行為などは見てはいけないと本能が働きかけるのでは?」

 早「なるほど。近親婚を本能的に避けるために、血族関係の者の尻などを見ると、逆に嫌悪が生じるようになっていると…
 何かやけに説得力がありますね、その説。茂木健一郎先生とかが言ってたら、そのまま信じそうな感じ」

 寺「しかし、その説でいうと、好きな人の排泄行為は見ても良いということになりますなあ。う〜む……」

 早「もっともらしく聞こえたが、いきなり破綻だ」

 寺「しかし、排泄行為を一番覗かれたくない人間として、親、兄弟、妻、友人、彼女、同僚、赤の他人…などと考えると、やっぱり一番覗かれたくないのは彼女って感じですか。というか、女に覗かれたくないんですよね」

 早「『女に見られる』ってのも、便所夢のパターンにある気がします」

「車内で便」(早川)

 社用で車に乗っている。後部座席の中央、両側には、スーツ姿の若い女性。
 急に便意を催す。運転手にトイレのあるところで降ろしてくれないかと頼むと、彼は言う。
 「そこ開けるとトイレですよ」
 尻を浮かして座席のフタを取ると、中にタッパーが入っている。これが彼の言うトイレであった。
 仕方がない。もそもそとズボンを脱ぎパンツをおろす。タッパーにまたがるが、肛門の手前で便が逡巡する。
 両脇の彼女たちは、素知らぬ風をして窓の外を見ている。早く排出しようとするが、気ばかり焦ってちっとも出てこない。
 ふと気が付くと、両隣の女性が、見上げるばかりの巨体に見える。自分の体は痩せた子供のようにみじめになっており、男の部分も唐辛子のようになってしまっている。
 便意をこらえていると、男の肉体は矮小化してしまうらしい。さらに焦る。しかし「ぶり」とか「ぴー」などという排便音を発してしまうのは断じて避けたい。
 車がでこぼこの路面を通過して「ガッタン!」と揺れた瞬間に出そう。そう決めて尻を構えるのだが、こういう時に限って車は実にスムースに、快適に走行するのだった。

両脇の彼女たちは、素知らぬ風をして窓の外を見ている。

 早「排泄を女の人に見られる、っていのも羞恥を通り越してなんか恐怖に近いものがありそうです」

 寺「ぼくにもこんなのがありますよ」

「会社の共同トイレ」(寺西)

 大阪の下町にあるこぢんまりしたビルに証券会社が入っている。その隣は、僕が以前勤めていたデザイン会社だ。両社の共同トイレが通路にある。
尿意を催した僕は、トイレへ向かう。ふと見ると、トイレの近くに、OLがぼうっと立っている。

 トイレに入ると、天井が斜めだ。便器が遠い。小便が届くか不安である。
 上体をのけぞらせ、勢いよく放尿するのが一番良いと思われるが、問題がある。小便の描く放物線は便器から外れ、きっと足下までびしょ濡れになるだろう。それにトイレのドア近くにいるOLに勢いよい小便の音が聞こえてしまう。それはどうしても避けたい。彼女たちが苦手なのだ。
 「デザインボンドが臭い!」と、以前から度々彼女たちに苦情を訴えられているのである。
 しばらく尿意と闘ったが我慢できなくなる。
 「ああ、もうダメだ……」意を決して、いざ放尿!
……そこで目が覚めた。

OLに勢いよい小便の音が聞こえてしまう。それはどうしても避けたい。

 早「女の人をここまで意識してしまうのは、よくわかります。
 ぼくのいた会社のトイレってのが、ドアの真ん前が喫煙所だったんです。ドアの下の方に隙間があって、そこから女子社員の足とかがみえて、話し声も全部聞こえるの。で、しゃがんだはいいがどうしても出せなくて、わざわざ表参道駅の便所まで行って、出したことがあります」

寺「車内の便」では、大変な状態に置かれているのに気を遣いながら、さらにどうしようもない状況に追い込まれる。本当に悪夢ですね」

早「チンポも小さくしなびて惨めでした」

 寺「申し訳ないけど、『便が逡巡する』のところは面白くて吹きだしてしまう」

 早「会社の共同トイレ」では、女性問題もさりながら、「放物線」の問題にも言及しないわけにはまいりません。
 男で、特に和式の場合、往々にして落下地点が狂ったりするんですよね。予想外の勢いでとんでもないところにいっちゃったりとか、全然違う方向に射出されたりとか。たまにいきなり二股とかに別れたりしますが、ありゃ何なんですかね」

 寺「あれは焦るわ〜。いったん放尿し始めたらそう簡単には止めることができないから厄介なんですよね。
 でもあの現象は誰にでもある。どんなに高価な洋服を身に着けた金持ちや男前にもあるんです。郷ひろみやキムタクもあるだろうし、高倉健だってある。それ考えたら面白いなあ」

 早「拡散波動砲みたいになっちゃうこともありますね。始末に困りますよ」

 「僕の『小』の場合、いつも実際に小便がしたくなってるんですよ。
早川さんが『大』を見るときは、やはり大便をもよおしているんじゃないんですか?

 早「『大便をもよおしている』と書くと、何か『大便祭り』とかみたいです。でも別にもよおしてませんな」

 寺「もよおさないんですか。僕は実際に尿意が引き金になって見るのに。早川さんはじゃあ何が引き金となって便所ドリームを見るんでしょうか。外的なものでないとしたら精神的なもの?」

 早「それこそがまさに問題の核心と申せましょう。
 便所ドリームに伴う感情は、いつもきまって「嫌悪感」「恥」「恐怖」「不安」など、負の感情ばかりです。大爆笑のうちに目を覚ます便所ドリームとかいうのはないのです。基本的にこれは悪夢…なんだろうか?」 

 寺「なぜか便所ドリームはそれが何を意味するものなのかをあれこれと探りたくなる。何か深いことを意味してるような気がするんですよね。でないと何のためにこれほどまでに困難なイメージを夢として見させられるのか。
 それを解明すると、新たな素晴らしい世界が開けたりなんかしてね。どう?早川さん。便所ドリーム・スピリチュアル!」

 早「素晴らしい発明かも!」

 寺「世間には夢判断というものがありますが、これは便所ドリーム限定版。本当の自分を知りたいなら便所の夢だけでじゅうぶん。だって「便所の夢こそまこと」と誰かが言ってませんでした?」

 早「実質的にもけっこういけるかも。体の健康診断だって大小便を分析するんだから、精神の健康は『大小便の夢』を分析すればいいわけですよね!」

 寺「便所ドリーム・スピリチュアル! 面白そうでしょ」

 早「じゃあもう我々もその線で、儲けに儲けましょう。とりあえずサイトを開設していろんな悩みに答え、テレビ雑誌取り上げられればあとはこっちのもの、人生訓なんかを織り交ぜたコメントを心がければ大衆受けもするし、十年は食っていけますよ。あと着物着て、オペラ歌えばもう完璧!」

 寺「早川さんが着物にオペラなら、僕はパープルのドレス着て黄色のカツラを被るぞ。で、メケメケ……いや、ときどき俳優として『クロとハゲ』の舞台に立ったりなんかするのだ。
 ただし下記の注意書きが必要ですよね。
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便所ドリーム・スピリチュアルは、現在の科学で証明されたものではありません。
人生をよりよく生きるためのヒント、言うならば便所の芳香剤のようなものです
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 早「最近の歌手や文化人は、名前もローマ字表記にして疑似外人になるのがトレンドですから、ぼくらもそうしましょう。TERRY&IKUで決まりかな。夢ふくらみますね」

 寺「ハウ・ドゥ・ユゥ・ドゥ〜! ボク、TERRYデ〜ス! ミナサ〜ンゲンキカー!
IKU! レッツ、ベンジョーイ!」

 早「一気に夢が壊れました」

著者プロフィール
1965年東京生まれ。文筆業、書籍デザイナー。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。『へんないきもの』『またまたへんないきもの』がベストセラーに。監訳『黙って俺についてこい文句がある奴ァ爆撃だ』もある。

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